本文
すずくしめけさだすきもんこ
すんなりした長胴から外反する口縁端に、先が尖った櫛歯具で、さざ波文様をめぐらし、さらに上胴に荒々しい斜格子、中胴に波しぶきを連想させる三帯の連弧文と直線文をかけ合わせた、大胆な構図で器面を飾っている。珠洲の列品でも、櫛目文をこれだけ縦横に駆使した装飾壺は珍しい。素地はよく焼き締まって、ところどころ緋色に発色し、肩にうっすらと黄緑色の降灰がかかり、下胴にはきめ細かい叩き目を残す。口縁の半分を欠損するが、珠洲独自の装飾壺として名高い逸品である。
こうした多彩な櫛目文のデザインを、器全面に描いた装飾壺は、他に2例が知られている。